カウンターにすでに座っている中高年男性2人は岩沢さんと知り合いらしくて
岩沢さんが、「この方は、今日鹿児島から来てくれたポンコツさんです」と紹介してくれた。
「恥めまして。ポンコツです」とあいさつする。
中高年男性たちは、すでにビールを飲んでいるので、自分もビールを注文したが、
ビールサーバーの調子が悪いらしく、ママからは「ちょっと待っててね」とのことである。
参ったな。
「その間CDでも聞きましょう」
ママがCDを流してくれた。ホーンセクションの音と軽快なリズムの音楽が聞こえてくるが…。
誰だろうか? 考えなくても独特の声でわかった。
「これが加奈ちゃんのCDか!」
「そうです。意外でしょ? 彼女はポップな曲もすんなり歌いこなしますよ」
岩沢さんが解説してくれる。
「加奈ちゃんが来たらCDにサインをしてもらいましょう」
正直自分は、CDを聞くまでは“僕はいわゆるポップとか、スカのリズムは好かん(笑)。
何で民謡のCDじゃないのかな?” なんて聞かず嫌いなところもあったが、
こうやって聴いていくと、シンプルなアレンジに彼女の声が良くはまっているね。
今日は、この場所ではバンドの演奏はできないだろうし、どうするのかな?
「今日は、スカラバーズ(ユニット名)ではなくて、あくまで加奈ちゃんのソロですよ」
と岩沢さんの解説が続く。
やがてビールが運ばれて、やっと乾杯だ。前回来店時は“品切れ”だった俺の大好物・海ぶどうも
しっかり二人分注文してさあ、門司の夜を始めましょう。
適当にビールを食べたり飲んだりして、その間読谷出身の沖縄人(パイロットとのこと)
の人が来店してあいさつを交わしたり、また座敷にも少しずつ常連さんだろうか、集まってきている。
みんな来店するたびママに気さくに話しかけているね。
店が満席になったころ、「ママ、こんばんはあ!」と言いながら堀内加奈子さんがやってきた。
後ろには付け人? マネジャーなのかな男の人も一緒だ。
ママと久々の再会のようでハグをしている。
カウンターの中高年男性にも「あら? お久しぶり!」と再会を喜んでいる。
岩沢さんとは当然窮地のいや旧知の仲のようで「岩沢さん元気? 今日はありがとね」と言っている。
僕はその光景をじっと見ていたが、岩沢さんが気を利かせたようで
「加奈ちゃん、この人(俺のこと)知ってますか? 鹿児島のポンコツさんですよ。今日は加奈ちゃんが来るってことで
鹿児島から来てもらいました。ポンコツさん、髪型変わっちゃってるからわからないかもね」
加奈子さんは、少し記憶をたどっているかのようであったが、
「嗚呼、宮古(民謡)やってる人ね。知ってますよ」とのことだった。
社交辞令であるだろうが、まあ嬉しいかな(笑)。