門司の夜 最終回
楽しかったライブはあっという間に終わり。
加奈子さんは、別の予定も入っているようで、今日はワンステージだけのようだ。
MCでも言っていたが、「スカラバーズでCDをリリースしました。ぜひ聞いてね」との
CDは、いつの間にか俺の座っているカウンター前に置いてある。
いや、すでに包装ビニールが開封され、「ポンコツさん、加奈ちゃんにサインをしてもらいましょう!」
と岩沢さんがだんどっていたようだ。
カウンターの俺を入れて中高年男性4人に、1枚1枚加奈子さんはサインをしてくれたし、
ひとりひとりに、握手をしてくれた。
ママともお別れのハグをしている。
岩沢さんたちと長話が続いていたが、「鹿児島の人、今日は遠くからありがとうございました。
お土産までいただいて…」
「今日のライブ良かったですよ。また島思いに行きますね」
と俺は言ったけど、良く考えてみたら加奈子さんはもう島思いを“卒業”してるし、スカラバーズの
プロモでこれから全国を駆け巡るだろうから、“うーん、もう彼女の民謡を聴くことはないかも…”
と、泡盛に酔ったせいもあるだろうけど、そんなこと思っていたポンコツ君であった。
最後に、加奈子さんと握手をした。ハグはしなかった。(するわけないだろう、日本中の
加奈子ファンを敵に回すぞ!)
加奈子さんたちが去り、岩沢さんたちとちびりちびり飲んでいる。
岩沢さんは明日一番の便で那覇経由石垣ツアーだという。
ほんとは早く支度をしないといけないだろうが、俺に付き合ってくれたみたいで
申し訳ないです。
「明日も早いですし、帰りましょう」
門司駅までふたりで歩いた。岩沢さんがポツリと言った。
「加奈ちゃんは、そこいらの民謡唄者とは違うよ。彼女は北海道から単身美佐子先生に
弟子入りして、人の3倍も4倍も努力をしてきたのだからね。僕はこれからも応援するサー!」
岩沢さんの、加奈子さんへの深い愛情を感じたのであった。おやすみなさい。
鹿児島へ戻って数日。
仕事を終え家に戻ると、一枚の絵葉書が届いていた。
“誰だろうか?”
差出人はなんと、【堀内加奈子】と書いてある。
全国ツアーの途中の地から投函したようだ。
「はいたい! 一花でいごではありがとうございました。
お土産までいただいちゃって…。
次回は、宮古民謡聴かせてくださいね」
と書いてあった。
彼女の字であろう。マネジャーや付け人の代筆じゃなさそうだ(笑)。
嗚呼、俺も一応“認知”されているようだ。ありがたいことだね。
、“うーん、もう彼女の民謡を聴くことはないかも…”
ではなくて、彼女を追いかけてみましょうか? 岩沢さんと(笑)。
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