いつも「島思い」に来ても、次の日の朝の飛行機が早かったりして
閉店間際まで居たことがない。
今日は次の日の午後まで特に予定もないし、できるだけ遅くまで居たいな…って思ってたら
あの大城美佐子先生も「出勤」してきた。
今日は唄が聞けるかも。
加奈子さんが、「お兄さん(と言った)、何かリクエストして!」と僕を見ながら声をかけてくれた。
早弾きも良いけど、シンプルな名曲が聞きたくて「てぃんさぐの花」をお願いした。
彼女の高い澄んだ声が、僕を癒してくれる。
那覇の夜は、すっかりこの店に居るのが僕の定番になっているようだね。
いつしか次のステージが始まり、お客さんに歌わせるコーナーになった。
別のテーブルに座っていた男性が三線片手に、ビギンの「三線の花」をしみじみと歌った。
うーん、やっぱここに来る人はレベルが高い。
「じゃあ、次宮古民謡のお兄さん。よろしく」とのことで
「三線弾いて良いですか?」
と声をかけ三線をツメを手渡された。
「すいません、鹿児島のポンコツです。宮古民謡の豊年の歌早弾きをやります」
と言って、マイクの前に座った。
こりゃ、生たまごぶつけられるかも…。
不安の心が支配する中、さあ出番だ。
「くとすかーらー ぱずみゃしーよ」と歌い出したら、おきゃくさんが間髪いれずに「サーサー」と
囃子を返してくれるではないか!
隣では、大学教授の唄者が一緒に伴奏してくれるし、島太鼓のネーネーも
太鼓を入れてくれて、今までにない心地よさだよ。
2番3番と唄って、ほんと気持ちが良かったから思わず4番までやってしまった。
お客さんのノリも良い。生たまごの心配はなさそうだ。
何とか歌い終えた。「良かったぞ! よお、国吉源次!」なんて声もかかる。
「もう一曲歌え!」と全く知らないお客さんにも言われて。
舞い上がってしまった僕は、
「大学教授」に「つぎは、なりやまあやぐお願いします」と告げて
歌持ちを弾き始めた。
僕の歌に合わせて、見知らぬお客さんが歌ってくれている。
すばらしい光景だな。
“今までの孤独の稽古、渡嘉敷師匠の稽古は間違ってなかったんだな…”
そう、実感できた瞬間だった。
あさってのコンクール本番も、堂々とすればよいんだね。
歌い終わって休憩時間になったら、加奈子さんが声をかけてくれた。
「ニーニー、それだけ出来れば新人賞大丈夫だよ。頑張って!」
うん、少し自信がついたかな。今日はありがとう…と心の中でつぶやいていた。
おやすみなさい。