もう多良間か? たらまー21
「ポンコツ君、何か食べたいものはあるかね?」
「夕飯食べましたので…」
「そうか、自分たちはまだ食べてないのだよ。注文するけど良いね」
子供たちはボックスの中をはしゃぎまわっている。
これでは稽古はないであろう。
「ポンコツ君、ビール位頼みなさい。今日は草むしりの慰労会だよ」
(三線の稽古は無しってことかい? これでは多良間に来た意味が無いではないか…)
心の中は落胆している自分であるがそれを表情に出すわけにもいかず、ただただ黙っているだけであった。
やがて注文した料理や飲み物が運ばれて、渡嘉敷一家は乾杯して盛り上がっている。
「ポンコツさん、先にゆまたちが歌って良い?」
ゆまちゃんは、夢アネキとデュエットのようで、ふたりで男役と女役を使い分けながら
歌っている。
子供たちは、良く聞かされているのであろうか、一緒に口ずさんでいるではないか。
音程は合っていないが(笑)。
とりあえず、場を盛り上げないといけないから手拍子をした。
「いっつもアタイは男役なのねえ…」夢がボツリとつぶやいている。
「ポンコツ? 何か(選曲)入れた?」
やや不機嫌な俺にゆまが気づいたようだ。
「わかった。入れる入れる」
まりかちゃんは、「踊るポンポコリン」を楽しそうに歌っている。
リリーもおぼつかない姿で踊っている。
今度はゆまちゃんが「童神」を歌いだした。相変わらず良い声をしている。
師匠が「ゆま、ちゃんと歌いなさい」と指導している。
カラオケは進み、自分もビールを数杯飲んで「A CHI CHI」と歌っては、半分やけくそになっていた。
「師匠? 何か歌いませんか?」
「私は風邪をひいていて声がイマイチだ。それよりポンコツ君、そろそろ三線を出しなさい」
関連記事