夢にチャリンコを借りて、一旦あだんまで戻った。
三線を取ってきた。
海を見ながら歌うとしよう。
ふるさと海浜公園までのサイクリング。
丘のないまっ平な多良間島であるが、市街地を抜ければゆるやかな下り坂になっている。
ペダルをこがなくても、それなりに先に進む。
海が見えたらあとは、西へ西へ向かえば良い。
そうすれば、アスレティックやバーべキュウ場、シャワールームが完備された
公園にたどり着く。
去年の今頃、酒に酔った美和子ママに捕まって、飲んだっけな。
2年前の今頃は、浜辺でモネとお互いに三線で、歌を披露しあったな。
今年は、ひとりぼっちのこの場所だな。
海辺には家族連れが来ていて、まだ遊んでいる。
それを眺めながら、三線を弾こう。
誰に届け! と思うこともない、ただひたすら歌う。
そういえば、今の俺って、“俺の歌を聴いてほしい”っていう気持ちが希薄なのよね。
うーん、それは、好きな女が居ないってこともあるだろうし。
鹿児島で、イベントで歌う俺は、自分の中では“仕事”として捉えているからね。
工工四は見ない。見なくても歌える曲が増えた自分に驚いている。
でも、でも…。
今日もおそらく、師匠は畑で疲れきっているから稽古はないであろう。
で、明日はもう帰宅だ。
今回は稽古なしの可能性が高い。
それはそれで良いんだけど、でも、それじゃ島に来ている意味はないよな。
多良間じゃなくたって、他の島でも良いじゃないってこと。
宮古民謡だったら、宮古島でも良いじゃないの?
ってことを、もう一人の俺がつぶやいている。
でも、一方の俺は、いや、渡嘉敷師匠じゃなきゃだめなんだ…って言っている。
例えば俺も、モネやほかの生徒みたいに、合同での稽古を受けたいものだ。
みんなで合わせたり、他の人の演奏を聴いたり、じかに手ほどきを観察したり…。
今の俺にはそれがない。
ほぼ、自主的な稽古だけで、ここまで積み上げてきただけだ。
まあ、まわりはヘタクソ! とは言わないから、間違ってはいないのだろうが…。
考えなければいけない。じかにたっぷり稽古を受けたいのなら、
宮古か多良間に移住しなければならないって。
でも、40の俺に仕事はないだろ?
じゃあどうする? 自分の持っている資格やスキルで自営・自衛が最適だろう。
でも、絶対のパイが少ないだろ? 仕事もらえるか? 食べていけるか?
そんなことが頭の中をぐるぐる駆け巡っている。
三線やって、ほんとひとりぼっちになってしまった。
モネもどこかへ行ってしまったし、ゆまちゃんとも、もう会うことはない。
鹿児島ではなかなか理解者は現れない。
ほんと、俺はどこへ流れていくのかな?
さて、あだんへ戻ろう。