宮古からのフェリーが入港した。
タラップから乗客が降りてくる。今日は乗客は少ないようで人の波はすぐ途切れた。
しかし貨物が多い。フォークリフトは何往復も入船下船を繰り返し
たくさんの荷物貨物を積み降ろしていく。
まさにフェリーが、多良間のライフラインを支えている。
昨今の原油高は当然フェリーの経営にも重荷であろうが…。
400円の有償バスもいつの間にか来ていたけど、
今日は誰も乗る人がいないようだ。残念。
一方師匠は、海運会社の方と知り合いのようで(まあ多良間だからみんな知り合いなのだろうが)
さっきから「○○××▲▲■■」と多良間弁で会話をしてはゲラゲラ笑っている。
「ポンコツ君、そろそろ戻ろう。君は宿に戻って支度をしなさい」
ボロトラックは再び多良間の美しい風景を、さっそうとはいかないが走っていく。
今回の多良間は賞味一日だったけど、やっぱ多良間に来て良かったね。
宿へ戻って荷物をまとめ、師匠の家に向かった。
「ポンコツ君、君も昼食を食べなさい!」
師匠宅では、すでに孫のリリーやまりかが食事をしていた。
夢は厨房でまだ調理中だ。
師匠はどうやら、食事を作れないらしく、夢に向かって「食事はまだですか?」と
叫んでいる。
「ここでは子供が3人みたいなものよ…」と夢がつぶやいている。
「ポンコツも明日はコンクールかい?」
夢が声をかけてきた。
「そうだよ。今年は優秀賞だ」
「そうかあ、ゆまも今年はリベンジだしね、がんばってね」
「夢は宮古に行かないのかい?」
「あたいは仕事があるサー。それより、宮古で子供たちを頼むね」
昼食を食べ、三線や着物を点検した。
「ポンコツ君、今年の着物だ。どうだい、青も良いだろう? 青はね、私の教室の色なんだよ」
師匠がにっこり笑い、着物を自分の前にかざしてくれた。
「おお、よく似合うね。これで君も渡嘉敷教室の一員だよ。渡嘉敷の誇りを持って本番は、やってくれよ」
「わかりました」
食事を終えフェリー乗り場へ向かう。途中、昨晩おじゃましたサムディさん宅を訪ね
アイスコーヒーをいただいた。
「ポンコツさん、また多良間に来たら遊びにきてね」
とサムディさんからウィンクを投げかけられ(笑)、多良間のお菓子を土産にもらった。
再び車は多良間を横断していく。
「ポンコツ君、君は来年最高賞取ったらもう多良間には来ないだろうな…」
「いや、そんなことはないですが」
「いいですか、最高賞で終わりではありません。賞は通過点ですよ。最高賞のあとは教師免許だ、師範免許だとありますからね。
課題曲も3倍4倍ありますよ。ポンコツ君、そこまでやりなさい!」
「わかりました」
師匠がそこまでポンコツを期待しているのか…と思い、嬉しい反面、もう三線をやめられないなあ…っていう
思いも交錯している。
そして、師匠の言葉はそのまま、多良間の弟子たちへの不甲斐なさへの苛立ちもあるのであろう。
最愛の娘ゆまちゃんも、最高賞をとったら、もう三線はしないような意向があるようだ。
師匠はゆまを民謡歌手にしたかったようだが、ゆまは残念ながらJリーガー・
我那覇選手に似ている
彼氏に夢中だ(爆)。
フェリー乗り場に到着した。