門司で歌ったか? 3
ブレッド&バターの岩沢さんに似た岩沢さん(仮名)に促され、座敷に移動した。
座敷では、初老? の男性2名と、俺よりやや年下(失礼)の女性(なかなか美人だった)
が三線を思い思いに弾いている。
岩沢さんが、「この人、私の友人で鹿児島から来たポンコツさん」と紹介してくれる。
「恥めまして! 私がポンコツです」
と言ったが、みんな「嗚呼」とうなづくだけで特に反応はなかった。
一人の男の人が「この料理をつまみなさい」とのことで
「もったいないからいただきます」と言い、他人のメニューなのに、図々しく
食べ始めた。
そのかたわら、もうひとつの座敷でさっきから楽しく歌三線を楽しんでいる
グループをじっと見ている。
沖縄でも、お客さんがみんなで楽しく“自主的に”歌う光景は眼にしない。
民謡酒場やライブハウスは、あくまで“プロのステージを楽しむ”ための
ものだからね。
この店の、そこには“輪”があった。昔から“輪”に憧れ、どこの場所でも最後は“輪”に
なじめなかった、個人主義のポンコツである。
岩沢さんが「ポンコツ君、そろそろ君の三線が聞きたい。宮古民謡歌ってよ」
「わかりました。みなさん、生卵の準備をして聞いてください」
隣の男の人が「生卵って?」
「ヘタクソだったら、ぶつけてくれってことです(爆)」
「なるほど(苦笑)」
ってなわけで、三線とツメを借りて歌いましょう。
“サー なりやまや なりてぃぬ なりやまー”ってな感じて
「なりやまあやぐ」を歌う。
店が多少シーンとしたのは気のせいか?
泡盛のおかげで声が良く伸びるな。
気持ちが良いなあ。
「何この人? 唄者?」って、俺よりやや年下(失礼)の女性(なかなか美人だった)
がびっくりしたかのように叫んでいる。
歌い終わった。気持ちが良いね。
思ったより大きな拍手が起こり、
“嗚呼、渡嘉敷師匠の教わったとおりで歌えば、どこで歌っても確かに通用するな”ってな
確信が芽生えていた。
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