師匠が知り合いの家に外出し、夢暗男一家も“マンション”に戻り、
飲んだくれの美和子ママと自分だけが残された。
「ポンコツ? 飲むゾー! カンパイ!」
「ママ久しぶりイ!」
ってな感じで飲んで適当に会話する。
でも、なんで多良間に戻って来ているんだ? 嗚呼、製糖工場の稼動だからか?
「そうだね、この時期は工場で働いて稼がしてもらわないとねえ(笑)」
「宮古には戻らないんですか?」
「いや、また工場が終わったら戻るよ。仕事もあるしね」
(うーん、どうしようか、聞いてみようか? ゆまのこと…)
飲みながら自問自答していたが、どっちにしても聞いてみるかな。
「ママ、ゆまちゃんはその間ひとりですか?」
「嗚呼、あれね。あれは好きにやってるでしょ」
「年末ゆまから電話がありましたよ。宜野湾に居るって…」
「高校を中退したのサー! 本人は学校生活に未練があったみたいだけど、ダンナの決断でね」
「そうですか? 残念ですね…。民謡歌手になるとか?」
「それはない! みんなあの娘を甘やかせたのサー!」
それ以上、ゆまのことは聞けなかった。高橋ジョージと三船美佳のように、俺とゆまちゃんが
なるのは、不可能だってことがわかって、多少がっかりかな。
「ポンコツ? これからも多良間に来るのかい?」
「うーん、コンクールの結果しだいですね。たくさん稽古ができるわけでもないし。
宮古の別の師匠に鞍替えも考えないと。
それに、暗男はなんなんですか! あいつしゃべるんですよね(笑)。変わってますよね」
「アタシはね、あいつとうまくやろうなんて思わないよ! ウチの娘に…。ポンコツが夢のダンナだったら
よかったのに…」
ママはこのあとも、いろいろここでは書けないことを言いながら、最後は
涙を流していた。
自分は、ママの涙がいとおしくなったが、でもそこでママを抱きしめようとか
そういうことは思わなかった(爆)。
師匠が帰ってきた。自分たちがたらふくアルコールを飲み干していたのに
師匠はあきれたようだ。
「ポンコツ君! 全部飲んだね! 明日は多良間の旧正月・カジマヤーだ。
島を歩いて、どんなものか体験してみなさい!」
「わかりました」
明日も農作業はないね。それはホッとしたが、同時に三線稽古もないんだな…と思い
今後の身の振り方を真剣に考えなければならないなって感じながら、
師匠の小屋(笑)を後にした。おやすみなさい。