乾杯をしたけど、松さんは冷蔵庫からアボガドを出して、器用に皮をむき、
種を取り出し切り刻む。
トマトやスズキだったかな切り身と、さっきのアボガドにきゅうりとを
オリーブオイルとか薄口しょうゆで混ぜ合わせてはサラダを作っている。
「ごめんな、まだ出来上がるまで時間かかるから」
とのことで、自分は持ってきたマイ三線を取り出して
大リビングで歌うことにしよう。
“さてぃーむー めでーたーやー クヌーミユーニー…♪”と
お気に入りの名曲「かたみ節」を歌う。
吹き抜けの天井にブラックの壁に音がぶつかっていく。
気持ちが良いね。
「ポンコツは口で言うだけあって、(三線が)うまいね!」
とめったに人をほめないクールでスーパードライな松さんから
お褒めの言葉を引き出したな、世は満足じゃ(笑)。
「一応ここは湘南だけど、見てのとおり自然も多いし車がないと
不便なとこだよ。俺はポンコツみたいにどこでも歩くことはしない(笑)」
「しょうなんですか?」
「またギャグだな。で、沖縄にはいつ行くの? 俺は8月にダイビングで行くけど」
「そのころまでには、行くいや住むって気持ちでいますよ」
「じゃあ、次回の飲みはようやく那覇でだね。楽しみだな」
「そうですね。民謡酒場でも行きましょうか?」
「任せるよ。いよいよポンコツも一歩踏み出したなあ」
そうだな、俺は踏み出しちゃったな。もう戻れないし戻る気もなし。
数年後俺は路上に居るのか? 餓死してるのか? それとも
毎晩カチャーシーと泡盛か? 海ぶどうにオリオンか?
「数年後は俺とダイビングになってるよ。阿嘉島でね」
嬉しいこと言ってくれるね、松さんサンキュー。