俺が鶴見で仕入れたリオンいやオリオンビールは全部空けてしまった。
もちろん泡盛も仕入れてきたのだが、
「年末に会った時にもらった鹿児島焼酎が残ってるよ。飲んじゃおう」
とのことで、ポンコツの地元・日置市の「小鶴黄麹」を
飲むことにした。
焼酎の正しい次ぎ方は意外にみんな知らないらしくて
「先にお湯を入れるんですよ」と解説する。
ちびりちびり飲む。ふたりで他愛のない会話を楽しむ。
正直、高校の時は同級生ではあったけど、それほど
仲が良いというわけではなかった松さんとの関係だったのに、
なぜか30歳を過ぎたあたりからは交流の機会が増えたな。
俺の結婚話が破談になり、どん底の精神状態のなか、俺は沖縄音楽
や沖縄文化との出会いで救われた。
松さんはダイビングで定期的に慶良間諸島で潜っているってこともあって
いつしか沖縄話で盛り上がり、やがて同級生の中で一番
語る友となったようだ。
まあ、うれしいじゃないか! こうやって新居にも呼んでもらって。
玉城千春さん似の奥さんと会えなかったのが残念だが(笑)。
松さんは最後にパスタを茹でている。
俺は再び三線を取出し、「豊年の歌」「花」「安里屋ユンタ」に
「島唄」「とうがにあやぐ」「イラヨイ月夜浜」とたっぷり歌う。
松さんも俺の三線に合わせて調理をしながら口笛を吹いている。
どうやら俺の三線は“認知”されたようだ。
「やっぱ楽器は良いね。俺も再びトランペット吹こうかな。家を防音しないと
いけないけどね」
俺の三線で何か感じてくれたようだな。嬉しいことだ。
これからも、俺の歌で三線で、聴いてくれた人たちが何かを感じてもらえたら
それが俺の最大の喜びだな。
卑下することはないな、俺は。
「今日は良かった。そろそろおいとましないとね」
「ほんとに歩いて帰るのか? けっこう駅まで遠いぞ」
「大丈夫です。今は毎日1時間は歩いてますから。では夏に那覇で」