ホールには続々と人が集まってきた。老若男女入り乱れているが、やっぱり女性が多い。
パイプ椅子は満席になった。
司会者の女性がアナウンスする。
「今日のコンクールの司会を勤めさせていただきます、何某です」
ってな感じで。
「今日の審査員の先生方を紹介します」
いつの間にか、審査員席には10名ほど座っていた。
民謡協会の会長をはじめ、昨日事前稽古を見てもらった重信先生、ジロー楽園で有名な砂川次郎先生…。
女性の審査員も居た。
ひとりずつ紹介され、そのたびにお辞儀をする。
その後、協会会長の挨拶があり、今日の進行順の説明があった。
「この後、普及奨励賞の審査をします。その後は新人賞。休憩を挟んで午後からが優秀賞、最高賞の順番です。どうかみなさん、普段師匠に教わったことを忠実にこの場で発揮できることを願っております」
開会式が終わったので、控室に戻った。
私の師匠、渡嘉敷先生は別に受験するわけではないので、ずっと控室に居たようだ。
「ポンコツ君、三線の調弦をもう一回確認しなさい。確認したらもう触らなくて良いよ」
調弦をする。元々キーがBだったので、今日は一気にCシャープにしているので、
弦は慣れてないだろう。
自分の三線は中弦のからくいがどうもおかしいらしく、良く音が狂うのだ。
一抹の不安がもだげる…。
「師匠、本番の様子を見ても良いですか?」
「そうだね、どんな感じでやっているか見てきなさい」
控室を見て廊下を歩く。
廊下でも、控室に入れない受験生がちんだみをしていたり、直前稽古をしている。
廊下にテーブルが用意されていて、何気なく見たら、コンクールの進行表があるではないか!
手にとって眺める。自分の出番を確認しよう。
うん、あった。新人賞の5番目だ。俺の名前だ(笑)。
普及奨励賞は12、3人受けるようだね。
あれ? 俺の所属は【重信民謡研究所(多良間)】になってるね。なんで【渡嘉敷研究所】じゃないの?
俺も多良間島から来たと思われているかな。
どっか備考欄に【鹿児島】とでも書いてもらえると、インパクトがあるだろうが。
我が渡嘉敷師匠は、“教師”という立場で、多良間島で宮古民謡の普及にいそしんでいるが
あくまで、重信研究所の多良間分室といった立場であるようだ。
まあ、でもそんなことはどうでも良い。ポンコツの師匠は渡嘉敷師匠なのであるから。
この進行表、A4の紙数枚で作成されてるけど、どうやら師匠格クラスの人にしか配布されていないようだ。
せめて、ステージ横や、入り口には掲示をしてもらいたいものだ。
気分を盛り上げるためにも。