11月26日、昨日の酒が残っている。見事な二日酔いだ。
飛行機の時間ギリギリまで寝ていよう…と思ったら、携帯が鳴った。
「ポンコツ? 飛行機の時間何時だっけ? 空港まで見送るヨ」とゆまちゃんの声。
「学校があるだろ? 気持ちだけで良いよ」
「見送りに行きたいサー」
10時になって、ポンコツ車で美和子ママが迎えに来てくれた。
後部座席にはゆまちゃんの姿が…。
「あっ、学校抜け出して悪い娘だな」
「ちゃんと先生に言ってきたもん」
ポンコツ車は空港へと向かっていく。
相変わらず左折右折での手押しウィンカーも変わりがない。
ママがウィンカーを抑えるその姿は、ついつい笑ってしまう。
空港に着いた。
「実はふたりとも朝ごはん食べてないんだ。レストランで何か食べるサー」
相変わらず食事を作らないママである(呆)。
「ポンコツは何も食べないの?」
「頭が痛い。ウーロン茶でよいです」
「私はうな重が良いな」
「ゆまはどうせ残すから、もったいない。別のメニュウにしなさい」
「残さないもん」
3人で食事を食べる。朝からこのファミリーは食べながらハイテンションな会話をして
ゲラゲラ笑っている。
「ポンコツ? 今度いつ来る?」
「ちょっとお金を貯めたいから、来年のコンクールまで自粛かな。コンクールも師匠(の推薦)次第だけど」
「また来るんだよ…」
ゆまちゃんは、ママの言うとおり、うな重を残した。
制服姿のきゃしゃな身体をしたゆまちゃん。
身長は150センチないのかな? 添った眉毛に直径10センチはあるだろうか、大きなピアスを
してこれで太ったら見た目はお姉さんの夢にそっくりになるな。
嗚呼、ママが居なかったらその場で抱きしめちゃうのに(爆)。
「ポンコツ? 白髪増えたね」
「これでも苦労してるのさ。まあ、今後も少年のようなポンコツで居るサー。また会いにくるよ…
」
セキュリティチェックの場所で、ふたりと別れた。
今回のツアーもいよいよ終焉だ。
何を求めてきたのか、わからないままだったが、宮古で解答が出たね。
それは、きっと遠くない将来の移住ってこと。
目の前のおぼろげながらの道は、自分で草を刈り取って視界をよくすることだね。
その道を自分の道にするために、一時、ツアーを自粛しますよ。
その日までみんな元気でね。
飛行機は離陸する。高く上昇する機体。宮古の町並みがだんだん離れていく。
いつしか雲に入ってしまい、もう何も見えない。
でも自分の心にはひとつの光りが見える。
心の中でつぶやいた。
「いつの日か、この島を、この街を、自分のマイホームタウンにしてみせる…」