2006年04月21日
2006年宮古へ、多良間へ…17
師匠は2時に迎えに来てくれた。トラックにはゆまちゃんもまりかちゃん(幼女)も乗っていなかった。どうやら師匠ひとりで畑仕事をするようだ。
トラックは教育信号を通過し市街地を抜け、師匠の畑へと向かう。
さとうきびがユラユラ揺れている島の風景にも、牧場でおいしそうに草を食べる黒牛の風景にも、見慣れてきた。
師匠の畑に到着した。
嗚呼、昨年夏と変わっていない古タイヤのハンモック、今にも飛ばされそうな(失礼)ぼろ小屋も健在だ。(笑)
「ポンコツ君、あっちを見てごらんなさい。君が去年植えてくれたキビもこんなに大きくなりました」
振り向くと「あっ、ほんとだ! いやあ、成長しましたね」
きびは俺の背丈ほどに青々とした葉を実らせている。
植え付けが失敗してなくて良かったよ(^_^;)

(昨年夏に植え付けしたとき)
「ポンコツ君、今日はあっちのきびを刈り取ります。一反はない。大した面積じゃない」
「ポンコツ君、長靴貸してあげますから履きなさい。雨で濡れます」
「ポンコツ君、ヤッケを着なさい。途中で雨が降ります」
「ポンコツ君、鎌を磨ぎなさい」
「ポンコツ君、軍手は私のを使いなさい。君の軍手は新品ね、もったいないね」
師匠は、沖縄なまりで次々と指示を出していく。
それに対して自分は「はい、はい」と返事をしては、パッパと作業をする。
あっちの畑に移動した。
「ポンコツ君、きびはこの青々とした葉っぱを鎌で切り落としなさい。こうやってやるんだ。見ていなさい」
師匠は手際よくきびの葉っぱを切り落としていく。
「ポンコツ君、君はこっちから前へ進みなさい。私は反対側から進んで行きます」
きび狩りが始まった。自分の腕より上に位置する葉っぱを刈り取っていくので思ったより腕に疲労が蓄積されていく。
5分も経たないうちに、〝キビ狩りを手伝いたいのですが〟って、言ったときの威勢の良さはもう消えていた。(呆)
きび畑はあまり手入れをしていなかったのか(苦笑)、思ったより雑草が生い茂っている。雑草も抜かないといけないので、ペースが上がらない。
「ポンコツ君、草が多いから君は草を刈っていきなさい。私が後から葉っぱを切り落としていきます」
今度は雑草刈りになった。この方が楽かな?
面積は一反程度とはいえ、急いで刈らないと今日中に終わらないな…。
ある程度雑草を刈り終え、再びきびの葉っぱを切り落としていく。
ふと、見ると、きび畑は葉っぱを切り落としたので、きびの太い茎部分だけがそびえたっているという状態。
色は違うが、どことなく北海道・野付半島のトドワラを彷彿させるねえ…。

(今年の2月、奥のきびが成長した部分)
「ポンコツ君、今度はきびそのものを刈っていくぞ。きびの根っこから鎌で切り落としなさい。こうやるんだ」
師匠は曲がりくねったきびの根っこ部分を探し出し、鎌で切り取っていく。
「切るときにドロの部分を付けないでね。ドロが付いていると製糖工場が引き取ってくれません」
きびの切り落としは思ったより大変だ。きびの茎はくねくね曲がって成長したため、根っこを探すのに一苦労。根っこをたどるべく茎を引っ張っていたら師匠の作業している足元付近に達してしまい、あやうく師匠に切り付けそうになった(爆)。
「ポンコツ君、ドロを良く取ってちょうだい」
注意をされながらも作業を続ける。
うーん、ちょっと疲れてきた。今は3時くらいか?
自分から〝きび刈り手伝わせてください〟って言っておいて、〝師匠、休憩しませんか?〟は言えないよなあ…って思っていたら、
「ポンコツ君、休憩しましょう。トラックにパンが積んであります」

トラックの荷台にふたりで腰掛け、パンとウーロン茶を召し上がる。
「ポンコツ君、どうかね? 疲れてないかね?」
「いえ、大丈夫です。去年と違って暑くないので」
去年夏の暑さの中で、この作業をしていたら、まず身体が持たなかったであろうな。適度な温度でちょうど良かった。
「ポンコツ君、草が多いからきびも草も一緒に刈り取りましょう。私が草刈り機で全部取り去ります。ポンコツ君はきびを拾って束にしてください」
師匠はぼろ小屋(失礼)へ草刈り機を取りに向かった。
でも、草刈り機はエンジンがなかなかかからない。
どうやらガス欠みたいだ(呆)。
師匠は、再びぼろ小屋(失礼)へガソリンを入れに行った。
♪ウィーンと音を響かせ師匠は戻ってきた。
「よしやるぞ! ポンコツ君、きびは同じカーブ(向き)でそろえてね」
師匠は草刈り機で勢い良くきびも雑草も切り落としていく。
自分は師匠の後ろに近づき、きびを選別して道路付近まで運び、きびの向きをそろえて束ねていった。
きびはどんどん切り落とされ、束ねたきびは山となりあっという間に自分の背丈を上回った。けっこうな量だ。
束がいくつもいくつも出来ていく。
この束がやがておいしい黒糖になって、口に入るのだな。ドロはとらないとな。
師匠は途中、ガソリンが切れたのか草刈り機を止め、きびを集め始めた。
「ポンコツ君、きびの葉っぱも集めて束にしなさい」
言われるままに葉っぱも集めていく。
雨が降ってきた。疲れも溜まってきた。
でも、やめるわけにはいかない。自分からお願いしたのであるからね。
黙々と作業をしていた。
師匠が振り向いて言った。
「ポンコツ君、こっちに転勤(転職?)しないか?
」
「仕事があれば良いんですがね(苦笑)」
師匠も、黙々と作業をした自分に何か感じるものがあったのだろうか…。
転職? うん、多良間島に住むのも悪くはないかな? でも、現実は出来ないだろう。
忘れられない一言だったね。

畑の〝トドワラ〟状態は約半分にまで減った。でも作業ペースが遅いかな。
師匠の足を引っ張ってしまったようだ。
「ポンコツ君、そろそろ終わりにしよう。鎌を忘れないで持ってきてね」
ぼろ小屋まで歩く。水道で鎌を洗い、ヤッケを脱いだ。すっかり汗ばんでいる。
小屋付近にはたくさんゴルフボールが落ちている。打ちっぱなしを師匠はしているようだ。
「ポンコツ君、ゴルフはするかね?」
「すみません、やったことがありません。師匠は良くされるのですか?」
「宮古島へ行ったときはやるね。よし、私が教えてあげよう」
師匠はドライバーを手に【指導】を始めた。
「ポンコツ君、こうやって構えるんだ。目線はあっちへ」
「師匠、けっこう打つ前から大変ですね(苦笑)」
「打ってみなさい」
クラブを振り下ろした。見事に空振り(笑)。
「当たるまでやってみなさい」
当たった。ボールはきび畑へと消えていった。
「おお、良かった良かった。
もっと打ってごらんなさい」
師匠は近くてプレイを見ている。時折指導をしながら。
嗚呼、この光景は何か、自分にとって一瞬師匠が【父】に思えた瞬間だった。
自分のオヤジは、ゴルフが趣味だ。でも小さい頃から自分は父を恐れ、父は間接的にしか俺にモノは言わなかった。
直接話すのは、怒るときだけ。
もちろん、自分にゴルフを教えてくれたこともない。
妹とは、妹が社会人時代にゴルフへ何度も行っていたようだがね。
今日まで親不孝街道をどこまでも爆進中の俺であるから、仕方ないのだがね。
一方、師匠のお子さんはみんな女の子だそうだ。
家族ぐるみで交流し、息子のようにかわいがっていたモネも、諸般の事情で島を去っていった。
師匠は、モネのように素直に
を覚え、民謡に島に風土に親しみ、且つバイタリティが豊富な人物との交流を求めていたのであろうが、モネが去ったことできっとどこかしら、心にポカンと穴が開いているような寂しさがあったのかもしれない。
そんな中、得体の知れない親不孝街道爆進中の俺が、きび刈りをしにやってきた。師匠は俺に一瞬【息子】を思ってくれたのだろうか?
作業中に言った「ポンコツ君、こっちに転勤しないか?」の言葉は、そんな寂しさの裏返しだったのかも。
いや、そんなことはないか。
それは俺の単なる思い込みでしかないのであろうが、ゴルフを教わっていた瞬間は、師匠に一瞬の【父】を感じて、自分は胸にこみ上げてくるものを抑えることが出来なかった。
トラックは教育信号を通過し市街地を抜け、師匠の畑へと向かう。
さとうきびがユラユラ揺れている島の風景にも、牧場でおいしそうに草を食べる黒牛の風景にも、見慣れてきた。
師匠の畑に到着した。
嗚呼、昨年夏と変わっていない古タイヤのハンモック、今にも飛ばされそうな(失礼)ぼろ小屋も健在だ。(笑)
「ポンコツ君、あっちを見てごらんなさい。君が去年植えてくれたキビもこんなに大きくなりました」
振り向くと「あっ、ほんとだ! いやあ、成長しましたね」
きびは俺の背丈ほどに青々とした葉を実らせている。
植え付けが失敗してなくて良かったよ(^_^;)

(昨年夏に植え付けしたとき)
「ポンコツ君、今日はあっちのきびを刈り取ります。一反はない。大した面積じゃない」
「ポンコツ君、長靴貸してあげますから履きなさい。雨で濡れます」
「ポンコツ君、ヤッケを着なさい。途中で雨が降ります」
「ポンコツ君、鎌を磨ぎなさい」
「ポンコツ君、軍手は私のを使いなさい。君の軍手は新品ね、もったいないね」
師匠は、沖縄なまりで次々と指示を出していく。
それに対して自分は「はい、はい」と返事をしては、パッパと作業をする。
あっちの畑に移動した。
「ポンコツ君、きびはこの青々とした葉っぱを鎌で切り落としなさい。こうやってやるんだ。見ていなさい」
師匠は手際よくきびの葉っぱを切り落としていく。
「ポンコツ君、君はこっちから前へ進みなさい。私は反対側から進んで行きます」
きび狩りが始まった。自分の腕より上に位置する葉っぱを刈り取っていくので思ったより腕に疲労が蓄積されていく。
5分も経たないうちに、〝キビ狩りを手伝いたいのですが〟って、言ったときの威勢の良さはもう消えていた。(呆)
きび畑はあまり手入れをしていなかったのか(苦笑)、思ったより雑草が生い茂っている。雑草も抜かないといけないので、ペースが上がらない。
「ポンコツ君、草が多いから君は草を刈っていきなさい。私が後から葉っぱを切り落としていきます」
今度は雑草刈りになった。この方が楽かな?
面積は一反程度とはいえ、急いで刈らないと今日中に終わらないな…。

ある程度雑草を刈り終え、再びきびの葉っぱを切り落としていく。
ふと、見ると、きび畑は葉っぱを切り落としたので、きびの太い茎部分だけがそびえたっているという状態。
色は違うが、どことなく北海道・野付半島のトドワラを彷彿させるねえ…。

(今年の2月、奥のきびが成長した部分)
「ポンコツ君、今度はきびそのものを刈っていくぞ。きびの根っこから鎌で切り落としなさい。こうやるんだ」
師匠は曲がりくねったきびの根っこ部分を探し出し、鎌で切り取っていく。
「切るときにドロの部分を付けないでね。ドロが付いていると製糖工場が引き取ってくれません」
きびの切り落としは思ったより大変だ。きびの茎はくねくね曲がって成長したため、根っこを探すのに一苦労。根っこをたどるべく茎を引っ張っていたら師匠の作業している足元付近に達してしまい、あやうく師匠に切り付けそうになった(爆)。
「ポンコツ君、ドロを良く取ってちょうだい」
注意をされながらも作業を続ける。
うーん、ちょっと疲れてきた。今は3時くらいか?
自分から〝きび刈り手伝わせてください〟って言っておいて、〝師匠、休憩しませんか?〟は言えないよなあ…って思っていたら、
「ポンコツ君、休憩しましょう。トラックにパンが積んであります」

トラックの荷台にふたりで腰掛け、パンとウーロン茶を召し上がる。
「ポンコツ君、どうかね? 疲れてないかね?」
「いえ、大丈夫です。去年と違って暑くないので」
去年夏の暑さの中で、この作業をしていたら、まず身体が持たなかったであろうな。適度な温度でちょうど良かった。
「ポンコツ君、草が多いからきびも草も一緒に刈り取りましょう。私が草刈り機で全部取り去ります。ポンコツ君はきびを拾って束にしてください」
師匠はぼろ小屋(失礼)へ草刈り機を取りに向かった。
でも、草刈り機はエンジンがなかなかかからない。
どうやらガス欠みたいだ(呆)。
師匠は、再びぼろ小屋(失礼)へガソリンを入れに行った。
♪ウィーンと音を響かせ師匠は戻ってきた。
「よしやるぞ! ポンコツ君、きびは同じカーブ(向き)でそろえてね」
師匠は草刈り機で勢い良くきびも雑草も切り落としていく。
自分は師匠の後ろに近づき、きびを選別して道路付近まで運び、きびの向きをそろえて束ねていった。
きびはどんどん切り落とされ、束ねたきびは山となりあっという間に自分の背丈を上回った。けっこうな量だ。
束がいくつもいくつも出来ていく。
この束がやがておいしい黒糖になって、口に入るのだな。ドロはとらないとな。
師匠は途中、ガソリンが切れたのか草刈り機を止め、きびを集め始めた。
「ポンコツ君、きびの葉っぱも集めて束にしなさい」
言われるままに葉っぱも集めていく。
雨が降ってきた。疲れも溜まってきた。

でも、やめるわけにはいかない。自分からお願いしたのであるからね。
黙々と作業をしていた。
師匠が振り向いて言った。
「ポンコツ君、こっちに転勤(転職?)しないか?

「仕事があれば良いんですがね(苦笑)」
師匠も、黙々と作業をした自分に何か感じるものがあったのだろうか…。
転職? うん、多良間島に住むのも悪くはないかな? でも、現実は出来ないだろう。
忘れられない一言だったね。

畑の〝トドワラ〟状態は約半分にまで減った。でも作業ペースが遅いかな。
師匠の足を引っ張ってしまったようだ。
「ポンコツ君、そろそろ終わりにしよう。鎌を忘れないで持ってきてね」
ぼろ小屋まで歩く。水道で鎌を洗い、ヤッケを脱いだ。すっかり汗ばんでいる。
小屋付近にはたくさんゴルフボールが落ちている。打ちっぱなしを師匠はしているようだ。
「ポンコツ君、ゴルフはするかね?」
「すみません、やったことがありません。師匠は良くされるのですか?」
「宮古島へ行ったときはやるね。よし、私が教えてあげよう」
師匠はドライバーを手に【指導】を始めた。
「ポンコツ君、こうやって構えるんだ。目線はあっちへ」
「師匠、けっこう打つ前から大変ですね(苦笑)」
「打ってみなさい」
クラブを振り下ろした。見事に空振り(笑)。
「当たるまでやってみなさい」
当たった。ボールはきび畑へと消えていった。
「おお、良かった良かった。

師匠は近くてプレイを見ている。時折指導をしながら。
嗚呼、この光景は何か、自分にとって一瞬師匠が【父】に思えた瞬間だった。

自分のオヤジは、ゴルフが趣味だ。でも小さい頃から自分は父を恐れ、父は間接的にしか俺にモノは言わなかった。
直接話すのは、怒るときだけ。

もちろん、自分にゴルフを教えてくれたこともない。
妹とは、妹が社会人時代にゴルフへ何度も行っていたようだがね。
今日まで親不孝街道をどこまでも爆進中の俺であるから、仕方ないのだがね。

一方、師匠のお子さんはみんな女の子だそうだ。
家族ぐるみで交流し、息子のようにかわいがっていたモネも、諸般の事情で島を去っていった。
師匠は、モネのように素直に

そんな中、得体の知れない親不孝街道爆進中の俺が、きび刈りをしにやってきた。師匠は俺に一瞬【息子】を思ってくれたのだろうか?
作業中に言った「ポンコツ君、こっちに転勤しないか?」の言葉は、そんな寂しさの裏返しだったのかも。
いや、そんなことはないか。
それは俺の単なる思い込みでしかないのであろうが、ゴルフを教わっていた瞬間は、師匠に一瞬の【父】を感じて、自分は胸にこみ上げてくるものを抑えることが出来なかった。

Posted by ポンコツ34@那覇 at 19:12│Comments(0)
│多良間島